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導入事例・レポート

本格的価格革命始まる

2009/09/01

世界的不況が叫ばれ、消費不振が続いている。西友を筆頭に、イトーヨーカ堂、イオンが続き、コンビニエンス業界まで参戦し、世はまさに価格破壊時代に突入した。

 当社は常々、「この国の流通コストは高すぎる。消費税値上げ分程度は流通だけで捻出できる。」と主張してきたが、いよいよ現実味を帯びてきた。理屈はどうあれ、消費者にとって価格低減は望ましいが、流通業者にとっては生き残りを掛けた戦いとなる。本稿では当社が得意とする食品分野に的を絞って述べる。

コスト削減のできない者はこの価格革命で消え去る
 どの業者も否応なく価格戦争に巻き込まれる訳であるが、当然のことながら、損する商売は続かない。コスト削減ができない企業は淘汰される運命に曝される。そこで、仕入改革、生産性改善、ロス削減が始まるが、従来の取引慣行、業務ルールが前提では限界がある。
 現行制度下でできることは既にやり尽くした感がある。従って、今後、生き残りたい者は発想の転換(いわゆるパラダイム転換)を行い、例外なき、改革に取り組む必要に迫られる。
 大手量販店、外食企業の仕入改革が上流の改革を加速する当社が得意とする食品分野に絞って述べると、食品の60%を占める生鮮食品で勝負が決まる。何故なら、一般食品は既に、激しい競合の中で卸売業者の統合、システム化が進展しており、改善の余地は多いとは言えない。
これに比べ、生鮮食品分野は卸売市場経由が多く、関与する業者数が多い。収穫量の変動が大きく、規格・価格がぶれ易いので、見て流通させる慣行が定着し、また、リスクの分散を図るために業者数が多くなる のであるが、価格破壊がこれらの慣行・制度を破壊する時期が近づいている。今後の仕入改革の方向性をまとめると、次の通りになると推察される。

①生産者と需要家の間で取引に関与する業者数の削減(消費者直も含めて)
②生産履歴を不明確にする規格選別の縮減と規格外商品の消費地への流通
③生産者-消費者間の最短ルート、高鮮度定温物流の構築
④業種別流通から業態別流通へ(例:青果物卸→フルライン卸)
⑤電子取引による取引コストの低減と正確化、多情報化、高速化
⑥大口特定多数間における電子取引所

 いづれも既存の卸売市場制度を凌駕する内容であり(当事者を無視するものではない)、この改革を推進できる者はメリットの大きい大手量販店、外食企業以外では難しいだろう。

業務改革なしに大きな成果なし、データに基づかずして業務改革なし
 当社は「仕事測る君」「動作測る君」等の作業測定ツールを用いた生産性改善を業としているが、当社実績では平均16%位の効率化が達成されている。このデータを聞いて、「そんなに改善できる筈がない。」「元の出来が悪かったのだ。」という反論がでると思うが、真実である。

 当社のやり方は現状を肯定して ①無駄を削る ②作業速度を上げる だけでなく、作業測定のによって現システムの問題点を定量的に捉え、場合によっては現状を否定し、システムを手直しするから成果が大きいのである。定性的観念論だけでは説得力、納得力が足りず、当るも八卦当らぬも八卦で危険極まりないが、データを解析し、合理的にアプローチするから依頼者も業務改革に踏み込めるのである。しかし抜本的改革(革命)は信念なしにはできない。

 現在の事業の構造を前提にすると上に述べた業務改革までで、経験的には20%位の改善が限界と思われる。更にと言われれば、事業の構造に踏み込むしかなくなる。生鮮小売業で言えば、インストア型マーチャンダイジングからセンター型マーチャンダイジングに切り替える等、施設配置・構造、人員配置・機能、業務ルールを一新する程の改革が抜本的改革に該当する。このような大改革は理屈では証明しにくく、経営者の信念によるしかない。敢えて言えば、先行して成功した者の経験を信じて清水の舞台から飛び降りるしかない。当社が唱える生鮮ベンダーシステムがこの部類である。採用者は収益力で業界トップまで上り詰めたが、それでも追随者がなかなかでないのが現実である。

まずはデータに基づく事業管理を
 とは言うものの多くの企業で業務改革すらそう簡単にできるものではない。千里の道も一歩からというように最初の一歩が大事である。特に社員の多い企業では社長1人では思い通り組織が動かず、面従腹背が横行する。御輿を担いでいるふりをしてぶら下がっている者が跋扈するのが通例である。
コンサルタントとして当社ではまず、作業改善をテーマにデータに基づいて論議することから始めるよう顧客に勧めている。実測データという合理的物差しで社員のベクトルを合わせることから始めるのである。具体的には、小さな業務改善を作業測定とデータ解析で行うのである。うまく行けば、更にもう一歩と駒を進めるのである。この過程でやる気のある者、向いた者が判明し、成果の積み重ねが当該社員だけでなく他の社員まで奮い立たせ、次第に自ら改善に取り組むようになる。その段階でリーダーの先見性、信念が発揮できる環境が熟成される。

金治達雄
株式会社シスコム 代表取締役
生鮮食品の流通加工センターの企画から設計、建設、運用及び稼動後の生産性改善のコンサルタントとして数多くの実績。同時に作業効率測定用のソフト開発・販売を行う。
平井カンパニー 技術顧問



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