コンパクトなプロセスセンターで最大限の投資効果を狙う
しずてつストア 様
2025/04/14

株式会社静鉄ストア様 プロセスセンター概要
所在地:静岡県藤枝市
稼働: 2024年5月
静岡県内に34店舗を運営し、地元の生産者と連携し県内産の農産物や海産物を多く取り扱うなど、地域密着型の店舗運営を行う静鉄ストア様。
人口減少、高齢化、そして人手不足。スーパーマーケット各社が抱えるこれらの課題はしずてつストア様も例外ではなく、2021年7月にプロセスセンタープロジェクトがスタート。2024年5月に稼働しました。そのプロジェクトの経緯と今後の展開について伺いました。
差し迫る課題に対し、現状維持ではなく変化を
Q: しずてつストア様でプロセスセンターを検討された背景をお教えいただけますでしょうか。
石原様: 全国的に同じ状況だと思いますが、私たち静鉄ストアも労働人口の減少や採用難のなか人件費が上昇し、さらに電気やガスなど店舗を運営するあらゆるコストの高騰に直面していました。そして今後もあらゆるコストは上がることはあっても下がることは考えにくい。中長期的な目線で見たときに現状維持ではいずれ厳しい状況になっていくことは容易に想像できました。
このようなコスト上昇局面の中でも会社としては営業利益を確保し、今後も存続していかねばなりません。企業の運営コストとして人件費は大きなウェイトを占めますが、一方で各店舗では人材採用ができず慢性的に人手不足の状態にありました。そこで人数が少なくても店舗運営ができる体制を構築しなければならないという課題からプロセスセンターの検討が始まりました。
Q: 人手不足の中、その少ない人数でも運営する仕組みのためのプロセスセンターということですね。
石原様: はい。プロセスセンターを開設しそのための設備機器を入れればそれが可能になります。逆の言い方をすればプロセスセンターを作るからには他のどこかのコストを削減しなければならない。そうしなければ二重コストとなってしまいます。例えば店舗運営に関わる人数を減らす、精肉加工に関わる時間を減らして他の業務に携われる時間を作りだしスタッフを多能工化する。こういうことを当初から念頭に置いて検討を進めました。プロセスセンターを新規につくるにはどこかのコストが削減できなければ費用を捻出できません。投資に対する費用対効果が無ければ会社としては当然投資はできません。そこで店舗とプロセスセンターの役割分担を決め、プロセスセンターが担うべき能力やキャパシティを決め、プロセスセンターの具体的な基本計画を練っていきました。
集中投資する箇所とコストダウンする箇所を考える
Q: プロセスセンターの必要なキャパシティや生産能力は具体的にどのように決めていかれたのですか
石原様: プロセスセンターのキャパシティを考えるにあたり念頭に置いたのはプロセスセンターからの供給率です。精肉の1日の売上は当然店舗によって異なりますが、その金額によってはスタッフの人件費を賄うには厳しい店舗もありますし、売り上げが大きい店舗でもPCから一定量供給すれば人手不足を緩和できる店舗もあります。そこで店舗を日商規模毎にいくつかのカテゴリに分け、そのカテゴリごとにプロセスセンターからの供給率を試算しました。日商〇〇万円以下の店舗ではプロセスセンター供給率〇〇%とする、といったようにですね。そこからプロセスセンターが担うべき生産能力を算出していきました。

Q: 先ほどおっしゃった通り、プロセスセンターを作るからにはどこの作業量を減らすか、どこでコストを吸収するかも同時並行で考えられていたのですね。
石原様: そうですね。そして概ねの生産量が決まりましたので、平井カンパニーさんに生産能力に応じた工場レイアウトの参考図を作っていただき、必要な土地の広さもわかってきました。
Q: 想定する生産量と必要な広さが決まってくると、次は場所ですね。プロセスセンターを開設する場所はどのように決めていかれたのでしょうか。
石原様: 場所についてはいくつか候補がありましたが、最大の決め手は立地でした。新しい物流センターや物流委託先様のセンターとの距離を考えると、候補地の中ではここ以外には考えられませんでした。あとはもちろん予算などいくつかの要因はありましたが、様々な点から見てもこんなに条件の良い土地はもう今後出てこないだろうと思うくらい、条件的には最高の場所だったと思います。
実はこの場所は土地の広さ的には余裕は無かったのですが、その制約条件のおかげでコンパクトで無駄のない工場になったと思います。結果的に工場の建築費など総予算も抑えることができました。
Q: おっしゃる通り近年建築コストが年々上昇するなか、無駄を抑え予算を抑えた素晴らしいプロセスセンターだと思います。
石原様: 当社としても私個人としてもプロセスセンターをつくる事自体初めての経験でしたので、今になってみればもう少しここも検討すればよかった…など感じるところはあります。
Q: もう少しここも…とは、例えばどんな点でしょうか?今後プロセスセンターを検討していく方々への参考としてアドバイスを頂けると有難いのですが(笑)
石原様: 入荷~冷蔵庫保管~加工~包装~出荷といった一連の工程のモノの導線、特にその移動距離でしょうか。トラックが着く入出荷口の向きや、加工室の部屋の広さと幅にも制約があったので難しかったのですが、一連の工程の移動距離をもっと短くできたら尚良いレイアウトになったかもしれません。他にも細かい点はありますが、予算や土地の広さと道路付けなど様々な制約があるので100%完璧は無いですけどね(笑)。

Q: 工場が竣工し稼働から約1年が経過しようとしています。ここまでの道のりはいかがでしたか。
石原様: 入最初の頃は本当に大変でした(笑)。お店で使われる機器は知っていましたが、工場で使われている大きな機械や設備は私もスタッフも初めて目にするものばかりです。操作方法はもちろんちょっとした調整や不具合が起きた時の対処法も含め、すべての事が初めての経験でした。あらゆるトラブルも経験しましたが、スタッフ皆で一つ一つ対策を考え改善活動をしていくことで乗り越えることができましたし、その自分たちで解決してきた知見がプロセスセンターの運用ノウハウとして社内に蓄積できてきたと思います。
Q: 貴社のプロセスセンターにおいて、こだわっている点は何でしょうか。
石原様: やはり一番は商品の品質です。単にコストを削減するだけでなく、インストア加工に負けない高品質な商品を安定的に供給することにこだわりました。特に挽肉の鮮度管理は他社の事例を参考に改善を重ねました。また盛り付けについても、店舗で販売している商品と遜色ないレベルを追求し、作業手順を標準化することで、品質のバラつきを抑えるように努めました。品質のこだわりは当社のブランドイメージを維持し、顧客満足度を高めるために不可欠であると考えていたからです。時間はかかりましたが、スタッフ皆の協力のおかげで品質は良くなりました。

平井カンパニーへの評価
Q: 今回のプロジェクトのお手伝いをさせて頂き、平井カンパニーに対する評価は如何でしょうか
石原様: まずおよそのプロセスセンターでの生産数からたたき台となる参考図面を作っていただいたので、総予算や必要な土地の広さなどが把握できたのは大きかったです。当社としてもプロセスセンターを作るのは初めてのことで右も左もわからないなか多くの点がクリアになり、プロジェクトを進めていくことができました。そして加工設備の生産性も平井カンパニーさんの試算通りになってきました。提案いただいた当初はこの数値は無理ではないか?とも思ったのですが(笑)。稼働から10ヶ月経ち各種工程や段取りにも慣れてきた今では、ほぼ試算通りになってきました。
また検討段階で他社のプロセスセンターを見学させて頂けたのは本当に良かったです。品質管理の工夫や運営している企業の現場の方の生の声も聞けたことは、大変参考になりましたし、現在の品質改善活動にも大変役に立っております。
当社ではプロセスセンターだけでなく以前から店舗の機械設備も平井カンパニーさんにお願いしていますが、アフターサービスも迅速に対応いただけるので助かっています。
収益を確保する手段を多様化し、来たる時代に備える
Q: 今後の展望をお聞かせください
石原様: プロセスセンターとしては、引き続き内部の改善活動に引き続き皆で取り組んでいこうと考えています。特にこれからは衛生管理を強化し、他社にも誇れるレベルの高度な衛生管理を行っていきたいと考えています。こうした改善活動を通じてインストア加工に負けない、店頭で多くのお客様に手に取っていただける商品づくりを行っていきます。
またこのプロセスセンターの活用で、他社に負けない高品質な商品づくりと店舗含めた全体的な運営コストの低減を通じて収益確保の採りうる選択肢を広げ、事業継続において重要な役割を果たしていきたいと思います。

株式会社静鉄ストア
商品部 精肉プロセスセンター センター長 石原様(写真中央)
弊社
営業統括部長 榎下(写真右)
静岡営業所 大町(写真左)

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