【コラム】精肉店舗とプロセスセンターにおける利益管理の進むべき方向性
株式会社ゆいカンパニー代表取締役社長 高塚 進
2024/08/29
精肉店舗とプロセスセンター(PC)利益管理の進むべき方向性とは
昨今導入が進む生鮮プロセスセンター。そのメリットとデメリットや導入した際の利益管理の考え方について、長年スーパーマーケット業界に身を置き、プロセスセンターを熟知するコンサルタント、株式会社ゆいカンパニー代表取締役社長の高塚進氏にお話を伺いました。
(1)精肉部門の現状
精肉部門は通常は生肉と加工肉の商品構成になっており、その生肉は牛肉・豚肉・鶏肉・味付け肉、その他の肉での品揃えです、その中に国産、輸入の品揃えがあり、取扱品目数は店舗・規模により様々ですが、全体で180~250品目くらいになっています。
各企業の精肉部門のマーチャンダイジング(MD)によりに商品構成・品揃えが決められ、取扱い品目は決まります。基本は本社商品部という部署で計画し、店舗展開されます。店舗のチーフ(責任者)の裁量で決めている企業もありますが、大半の企業は本社主動で決められていると思います。
数値管理の状況は、スーパーマーケットの場合は精肉部門も同様部門管理を行っており、通常売上高、仕入高、粗利益高、ロス高(値下げ、廃棄)などの管理と経費科目の人件費や水道光熱費や減価償却費の管理も部門別に把握し、営業利益高まで把握できる仕組みを構築している企業も数多くあります。
精肉部門の粗利益率(インストアの場合)平均28~34%。ロス率6~10%くらいで人件費率は11~14%くらいになっています。ディスカウントと称する企業の粗利益率は18~21%くらいで運営されているのが現状かと思います。
(2)インストア加工とPC加工との違い
基本的には加工するという事の違いはありませんが、多店舗展開する企業は店内加工での商品づくりの出来栄えなどの多少の違いがみられるほか、整形歩留りや商品歩留りの違いが出て来ます。いわゆる規格書通りの均一性に違いが出てくると思います。また加工後の十分な予冷(冷却)が取れずに店舗に陳列され、商品の退色が早く進む恐れも出てくると思います。
PC加工の場合は同一場所で加工するわけですから商品の盛付け方などの品質もバラツキはなく均一性があります。また基本は前日加工になるわけですので、少なくとも7時間以上0℃の冷蔵庫で予冷(冷却)がされると商品の退色は遅くなります。経験則では3日ぐらいは日持ちが長くなると思われ、お客様がお買い求めて冷蔵庫に保管し、消費期限が過ぎても変色や退色がないという結果が得られています。
これはコールドチェーン化という事でPC出庫から配送、荷受け、保管と商品の品温は0℃に保つ仕組みにすることで得られる結果と思います。
(3)PC加工の優位性について
「(2)インストア加工とPC加工との違い」で違いを述べましたが、PCの優位性は品質の均一化はもちろんそうですが、大型機械(AtoXやAtoZなど)や高速値付機で加工・包装値付けすることで生産時間が大幅に短縮され生産性が向上し、また商品化の後の予冷(冷却)が長時間にでき、退色・変色が遅くなる良い影響が出ます。
品質や人件費以外に、店舗の人手不足解消やPCに原料を一括納品になり原料原価が下がります。これはメーカーの一括PC納品により配送コストが下がるからです。
(4)インストア志向の企業はすぐにでもPCを設立
PCのメリット優位性はすでに説明したように精肉PC限らず惣菜PCにもメリットがあります。インストアでの加工比率をどのくらいするかの判断がありますが、精肉の場合はPC比率を100%全量PCから供給する体制がベストです。インストア店舗を少し残しておくとういう考えは持たずに全て標準化することです。
数値上、PC供給すると店舗売上対比人件費率は3%以下に下がります。惣菜の場合は、生寿司のネタや揚げ物などインストア加工の方が鮮度感は良いので、PC比率は40%くらいが適正と考えます。現行の人件比率より5%くらいは減少すると思います。
(5)利益管理の進むべき方向性は
~粗利益管理から営業利益管理へ(店舗とPC一帯で管理体制)~
企業によっては店舗及びPCの損益計算書の作成が仕組み化されていないところがあります。店舗、既存のPCの損益計算書の仕組みをいち早く作る事です。つまり営業状況を「見える化」して粗利益高しか把握できない仕組みから最終営業利益まで見られる仕組みにして問題解決を図ることです。また店舗だけのなくPCも含め精肉部門全体として一体になって管理をする体制が最も望ましいです。
高 塚 進
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