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導入事例・レポート

食品領域の競争力を高める、グループ初の共通のインフラを稼働

株式会社Peace Deli様(セブン&アイグループ)

2024/01/17

株式会社PeaceDeli様(セブン&アイグループ) 流山キッチン 概要
所在地: 千葉県流山市
稼働: 2023年3月

 セブン&アイ・ホールディングスの子会社である株式会社Peace Deliは、セブン&アイグループにおける初の「食の共通インフラ」となる「PeaceDeli流山キッチン」を2023年3月28日に稼働させました。
 セブン&アイグループにおけるグループ戦略の一環であるグループ食品戦略を推進するにあたり、イトーヨーカ堂・ヨークなどグループの小売店舗のほかネットスーパーへの商品供給も行い、グループのSST(スーパーストア)事業の変革を加速させるための戦略的事業会社であるPeaceDeli。1つ目のインフラである流山キッチンの開設の経緯とこれからの未来について伺いました。

他社にはできない独自性のある商品展開のために、グループ共有の製造機能を

Q: このたびはピースデリ様の流山キッチン開設に携わらせていただき、誠にありがとうございました。稼働し数か月経過し改めてとはなりますが、今般の流山キッチン開設の意図をお聞かせいただけますでしょうか。

平山様: 私たちセブン&アイグループの中期経営計画のグループ食品戦略の中で、食品市場における商品力や販売力の更なる強化を成長戦略の柱の一つとして掲げております。私たちは以前からも食品には強みがあり得意としてきましたが、ここでまたスーパーマーケット事業の改革を通じて商品力と販売力を強化し更なる成長を目指そうというものです。
 改革は組織体制や事業エリア・店舗運営など多岐にわたりますが、この流山キッチン開設もその改革の具体的施策の一つでして、イトーヨーカ堂などといったグループの小売事業における共有インフラとして他社に真似できない商品展開を通じて各店舗における商品力・販売力を強化させ、改革を加速させるという使命を持っています。

Q: 商品力や販売力の強化のための共通インフラとしてのプロセスセンターですか。

平山様: はい。私たちは以前からも食品に力を入れてまいりましたが、競合各社様との競争が激しくなっていくなか、ここで更に商品力や販売力の強化をしていかねばならないと考えました。
 ただ一方で、年々労働力確保が難しくなり店舗では人手不足になりつつあります。少ない人数で日々のオペレーションをせざるを得ないという状況でもありました。
 現状の体制のままで新たな施策を打とうとしても、そのしわ寄せは全て店舗側に行ってしまいます。いまでも人手が足りていないのに更に店舗に負担を強いるのは難しい。たとえ仮に今はできたとしても5年先や10年先を考えたときに現状の体制のまま改革を続けられるとは思えませんでした。
 とはいえ私たちは今後も持続的な成長を続けていかなければなりません。成長のために店舗側の負担を増やすことなく改革を進めていく、いやむしろ店舗の負担を軽くしながら改革の速度を上げていかねばなりません。こういった考えから「グループ共通のインフラ」という構想に至りました。
 幸いにして私たちには首都圏を中心に200店以上の店舗網があります。更にネットスーパーという販売チャネルもあります。この販売網の上を流れる商品の魅力を高め、他社には真似できない差別化商品の品揃えを拡充させる食品領域の改革を後方から支援することが私たちのミッションです。

精肉・鮮魚だけではなく、ミールキットやネットスーパーなど新たな取り組みへの挑戦

Q: 店舗における負荷を上げることなく、他社には真似できない差別化した商品をグループ全体に供給するためのグループ共有の食品製造工場ということですね。流山キッチンが製造を担う商品は具体的にはどのような商品なのでしょうか。

平山様: 食品スーパーのカテゴリでいう生鮮食品ということになりますが、中でも加工度が高く店舗での作業負荷が高い「精肉」と「鮮魚」の加工を行っています。加えて昨今の消費者のライフスタイルの変化からニーズの高い「ミールキット」も手掛けていきます。

Q: 精肉・鮮魚といった生鮮のほかにミールキットも手掛けられるのですか。流山キッチンで製造する商品はどのように決めていかれたのでしょうか。

平山様: 大枠でいえばグループ全体での経営戦略のなかで各社それぞれの役割分担で決めていったわけですが、店舗と私たちの間も同様に役割を考えながら私たちのミッションである「他社にまねできない独自性のある商品の供給」を念頭に品目を検討していきました。
 例えば精肉カテゴリでいえば、私たちのグループでは既にイトーヨーカ堂杉戸プロセスセンターがありますので、店舗・杉戸プロセスセンター、そして流山キッチンでの棲み分け・役割分担を念頭に考えていきました。一概に精肉商品といっても機械化が難しい商品、店内で手間をかけた方が圧倒的に品質を上げられる商品もあれば、機械化をして生産効率を上げても品質に全く問題のない商品と様々あります。その点を基準に店内加工とプロセスセンターで製造する商品とを考えていきました。そして杉戸プロセスセンターの生産品目や製造能力を考慮し私たち流山で担うものを決めていったという流れになります。
 鮮魚においても同様で、商品ごとに加工技術の難易度や作業負荷はまちまちなのですが、刺身、丸魚など加工して価格が変わるものを店舗で製造し、それ以外を私達が引き受けることとしました。こうすることで店舗のオペレーション負荷を軽減していくとともに店舗作業はその高度な技術が必要な商品作りに集中し品質を上げていければと考えています。 グループ全体で考えればプロセスセンターから供給するからには店舗のオペレーションコスト、すなわち加工にかかわる労力を削減し人件費を下げたいですし、逆に店舗は労働力確保が難しくなってきている中、プロセスセンターからの供給があれば少ない人数でも運営ができる。そのうえで商品の品揃えや売り場の魅力を良いものにするために「これはインストアでお願いしよう」「これはプロセスセンターで作ろう」という観点で考えていきました。
 ミールキットもいま消費者の方々からご好評いただいている商品カテゴリですが、他社にはできないものをつくるためには外部委託ではなく自社でこだわりを持って作る、このような考え方から流山キッチンで製造することとしました。このミールキットをはじめいくつかの商品はこれから展開するネットスーパーへの供給も視野に入れています。

Q: 製造する商品が固まってきました。次にその加工方法や機械を含めた工程を決めていくことと存じますが、どのように検討を進めていかれたのでしょうか。

村田様: 精肉についてはグループのイトーヨーカ堂杉戸プロセスセンターの経験がありますのでそこをベースにして検討を進めていきました。杉戸での実績値を参考に、今回製造するSKUと物量から必要な機種と台数を考えていきました。
一方でネットスーパーやノントレー、消費期限延長など新たな取り組みについてはその事を平井カンパニーさんに相談し、他社事例を基に提案いただきながら検証を通じて決めていった、という流れになります。

平山様: 精肉についてはベースがあったので良かったのですが、一方鮮魚については正直手探り状態でした。ですからお取引先様から色々と教えていただきながら商品と加工工程を検討していき、加工機器はやはり平井カンパニーさんから提案いただいて候補機種を絞り、一つひとつ検証を重ねながら決めていきました。ここは良い商品を作るためなので止むを得ませんが、ずいぶん長い時間がかかってしまいましたね。

PeaceDeli様ならではのこだわり。安心安全は当然。品質だけでなくSDGsも

Q: 今般の流山キッチンにおいて、特にこだわった点は何でしょうか。

平山様: まず当然のことですが、安全・安心な商品作りには力を入れています。工場内に色々な検査ができる検査装置を備え、品質管理部門において毎日サンプルを取って検査を行っています。また異物混入などについても細心の注意を払っていて、目視による検査はもちろん製造ライン上の金属検出器や・X線検査機で何重にも品質チェックを行っています。

<安全・安心のため何重にもチェックが行われる>

村田様: 環境への取り組みも積極的に行っています。隣にはイトーヨーカ堂の生鮮センターがあります。こういった物流機能を隣接させることで流通過程での移動距離や時間を短縮させ、結果的にCO2削減につながるよう物流各社様と一緒に取り組んでいます。またプラスチック使用量の削減を目指しノントレー包装機の導入、フードロス削減のため消費期限の延長ができるガス置換包装機の導入も積極的に進めました。

平山様: そして鮮度や品質にも当然こだわっています。工場内の温度もそれぞれの工程に合わせて最適な温度で管理されていますので、商品劣化を最小限に抑えることができます。また解凍装置など各種加工機器も店舗では導入できないような性能の良いものを導入していますので、商品の品質を向上させつつ生産性を上げることができています。
 一方で機械化できない加工や盛付作業などの手作業はインストア加工よりも手間ひまをかけて行い、他社に負けない高品質な商品作りを目指しています。例えば精肉では定量でカラ揚げ用にできる機械を導入していますが、例えば300gパックの商品を作る際は30g定量で切った鶏肉を単に10個入れればよいので作業性は高まります。その分、他のアイテムの盛付作業に手間をかけて行うことができ、生産性を落とさず高品質な商品作りを行うことが可能となりました。

<高性能な加工機器導入の一方、手作業による丁寧な商品作りにも力を入れる>

 こうしてPeace Deli様のプロセスセンタープロジェクトは想定された生産品目と物量に対し候補機種の絞り込みとテスト検証を通じて設備機器が決められていった。また株式会社プラントエンジニアリングオフィスヤマダ山田代表による基本設計~全体監修のもと関係各社の連携により順調に進み、2023年3月に稼働を迎えた。

プロセスセンター供給商品への評価

Q: 2023年3月の稼働開始以降大きなトラブルもなく順調に稼働していると伺っています。製造商品に対するお店や社内的なご評価は如何でしょうか。

平山様: 店舗の店長や精肉のチーフからの意見では、全体的な鮮度や見栄えについては全く問題ないとの声を頂いています。

村田様: 特に盛付のキレイさについてはインストア加工よりキレイとの評価も頂いています。インストア加工ですとどうしても作業者のスキル等に左右されて品質にばらつきが出てしまうのですが、プロセスセンターではそういったこともなく品質の均一化も実現できています。

平山様: 一方で、一部の商品の運搬過程で中身がひっくり返ってしまったなどいくつか課題も見えてきてきました。今後はこういった問題の改善に取り組み、更なる品質の向上を通じて店舗、そしてお客様に喜んでいただける商品作りに取り組み、今後はさらに生産量を増やして店舗負担の軽減や競争力のある商品作りに貢献していきたいと考えています。

平井カンパニーへの評価

Q: 今回のプロジェクトを通じて、弊社へのご評価をお聞かせください。

平山様: 平井カンパニーさんへは加工機器周りだけでなく、もう最初からなんでも全部相談させていただいていました。例えば今回、フードロス削減への取り組みとして生鮮食品の日持ちを良くしたいという課題もありましたが、平井カンパニーさんはガス置換包装など様々な方法があることを教えてくれましたし、全く知識を持ち合わせていなかった我々のためにガスメーカー等様々なメーカーを呼んで勉強会までしていただくなど、我々に新たな知見を入れるところまでご協力頂きました。そこで得た加工や包装など様々な工程ににわたる専門知識は、その後の商品作り検討やその加工機種選定においても大変役立ちました。

村田様: 我々はやはり機械の専門家ではないので、平井カンパニーさんには商品加工過程の困りごとや課題を相談していきました。例えばこういう食材を解凍するときに解凍ムラが出て困っているとか、こういう加工でバラツキを少なくしたいだとか、又はネットスーパーに向けて新たにこういった商品作りをしたいなど、加工工程における困りごとや課題をずっと投げかけさせていただきました。すると平井カンパニーさんからはこの加工ではこういった機械が使われていることが多いとか導入事例含め候補機種を提案いただけるので、その機械のデモンストレーションや実際の食材を使用してのテストを通じて機種を決めていくことができ、大変助かりました。
 機械の配置に関しても、色々とアドバイスいただきました。単に機器を配置するだけでなく、機器の前後のコンベアなど一連のラインとしての配置を考えて頂き、作業効率をアップさせるためにレイアウトや作業台やコンベアなども一工夫入ったものを提案いただきました。平井カンパニーさんのこれまでの経験やノウハウを基に色々と提案して頂けたので助かりました。導入させていただいた機器は現在大活躍しています。

平山様: またプロセスセンターの稼働がスタートしてからもスピーディーなアフターサービス対応にも感謝しています。我々は機器を使って生産してお店に商品を届ける使命があるので機械の停止が一番困ってしまうわけですが、トラブルが起きた際にもスピーディーに対応して頂けるので助かっています。

村田様: 小型の機械とか、備品とかについては他にも扱っていらっしゃる会社はたくさんあると思うのですが、こういった規模の工場で、大型の工場向けの機械のことや、生産ラインや機器レイアウトの配置や解凍・ガス包装など様々な分野まで知見を持っているのは平井カンパニーさんくらいしかいないのではないでしょうか。

今後のピースデリ、そしてグループの展開について

Q: 今後のPeace Deli様、そしてグループの展開についてお教えください。

平山様: 今回開設した流山キッチンはあくまで計画の中における1つ目のインフラという位置づけです。そしてこの後また第2のインフラ、そしてその後も様々な計画があります。その全体構想の中のまず1歩目を踏み出した、という段階です。

村田様: 実験的にある店舗に並べる商品をプロセスセンター供給のものに変えたところ、店舗の売り上げが増加したという結果がでました。これは少ない人数で運営していた店舗のオペレーションが追いついておらず時に品切れを起こし機会ロスがあったわけですが、プロセスセンターからの商品供給によりそのロスを埋めることができた、ということです。しかもプロセスセンターからの商品もこれまでと変わらずお客様に手に取っていただけた、つまりプロセスセンター供給の商品も同様にお客様にご支持頂けたということだと思います。

平山様: ですので今後第2の、そのまた次の計画を進めてインフラを充実させていくとともに、そのインフラであるプロセスセンターから新鮮で安全安心で魅力ある商品を供給していくことにより、グループ各店舗の生産性向上による利益面での貢献と更なる食品領域におけるグループ全体の競争力を向上させていきたいと考えています。
そしてピースデリから供給される商品が増えていくとともに、いつの日か「おいしくて安全で安心」の象徴としてピースデリの名前がブランド化するとうれしいですね。

株式会社Peace Deli 流山キッチン
 所長 平山 武典 様 (写真中央右)
 副所長 兼 精肉課 マネジャー 村田 直人 様(写真中央左)

弊社
 営業部 部長 北村 弘一(写真右端)
 営業部 横浜営業所 所長 佐藤 貴彦(写真左端)

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