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導入事例・レポート

プロセスセンターの商品はインストアの品質を上回ることができる

株式会社サンシャインチェーン本部様 プロセスセンター(株式会社Sフードプロセス様)

2023/07/31

株式会社サンシャインチェーン本部様 精肉プロセスセンター(株式会社Sフードプロセス様) 概要
所在地: 高知県春野市
稼働: 2019年7月

高知県を中心に四国地区で29店舗を展開するサンシャインチェーン本部。  サンシャインチェーン本部が今から10年以上も前から課題としてとらえていたのは「商品の品質の維持」でした。全国的に人口の減少、労働人口の減少と採用難という問題を抱える企業が多いなか、サンシャインチェーン本部においても同様に人材採用が年々難しくなり今後を担う精肉加工スタッフの育成・技術水準の維持にも課題を感じていらっしゃいました。そして様々な選択肢からその解決策を模索するなか、有力な解決策としてサンシャインチェーン本部が選んだのは精肉部門の「プロセスセンター化」でした。 その時に向き合った課題とプロセスセンター検討の経緯を伺いました。

「品質の維持」が将来的な課題に

Q: 本日はお忙しい中ありがとうございます。早速ではございますが、貴社でプロセスセンターを検討するきっかけをお教えいただけますでしょうか。

横山様: 検討が始まったのはもう10年以上前になるでしょうか。製造している精肉商品の品質を今後どうやって維持していくか、という事が課題になってきました。精肉商品の加工は高度な技術が必要で、一人の社員がそのスキルを習得するまでには相当の時間を要します。加えてそのスキルもどうしても個人差がありますので、結果として店舗ごとに商品のばらつきが出てしまいます。10年前のその当時でも採用難に直面し人員体制も十分とは言えないなか、今後ますます人材確保が難しくなっていくであろう将来にどうやって品質を維持していくか、何かしらの対策をすることが必要でした。 教育体制を充実させるという考え方もありました。他社であるような「研修センター」のようなものが当社にはありませんでしたので、当社でも作ろうかという話も出ましたが、そもそも新規採用ができない、採用できても人員が足りないという状況に陥った場合、いくら学べる場所があっても学ぶ人がいないのでは本末転倒になってしまいます。これから始めるのであればもっと他の方法もあるだろう、という事で他の方法も模索をしていました。 他社の様々な事例も学びたく、関東をはじめ他の地域のスーパーマーケットさんとも情報交換をさせていただきました。そして多くの会社が取り組んでいる「プロセスセンター化」についても色々と教えていただき、優良な選択肢として検討を進めていきました。

Q: 将来にわたる「商品の品質の維持」という目的でPCを検討されたのですね。

横山様: はい。各社様から色々教えていただく中で当社にもPCは必要ではないかと考えるに至りました。そこでスーパーマーケット各社様に伺って色々教えていただいたり現場を見せていただいたりしながら、「精肉PCとはなんぞや」と机上の勉強だけでなく実際にモノの流れなども見せていただき、良いところだけではなくデメリットも教えていただきながら、当社におけるPCのイメージを考えていきました。 また実際のPCの製造実務についても知っておかないといけない。例えば加工機械については、我々は店舗で使われている機械しか知識がありませんでしたので、展示会に出かけPCで使われている加工機器についての情報収集も始めました。その過程で、FOOMA国際食品工業展で平井カンパニーさんに出会ったのが当社と平井カンパニーさんの出会いですね。 こうしてスーパーマーケット各社様から教えていただいた情報と実際の加工機器や生産性を基にイメージを固めていきながら検討を進め、PCを作るという方針が決まっていきました。

最初の計画

Q: 最初の計画は店舗を改装しての計画だったとお伺いしています。

横山様: はい。まず当社既存店を改装してPCを開設する方向で検討を進めていきました。 ただまだ当時は社内でも様々な意見があり、PCでどれだけの製造を行うか、100%なのか、豚のみPC供給で牛はインストアで加工するか、など役割分担やPCの製造量もはっきりと固まっていない状況でした。このように生産量も固まらないなか、店舗を改装という広さ的にも制限のある場所で検討を進めていくわけですが、帯に短し襷に長しとでも言いましょうか、事業化が難しいと感じていました。

Q: 例えばどんなことでしょうか。

横山様: 自分が描いていたイメージを伝え平井カンパニーさんにPCレイアウト案を作ってもらったのですが、全店舗分の全量を製造するにはスペースが足りず、またこの限られたスペースでできる範囲の製造キャパを試算すると生産量が少ないのでいくら頑張っても初期投資の回収が難しい見込みとなりました。 投資回収が難しい計画を進めるわけにもいきませんし、社内でもう少し議論も必要と感じていました。さらに災害対策の問題もあり、様々な要因から一旦その場所でのPC計画は白紙となりました。

再び計画が始動

 最初に候補として挙がった店舗改装によるPC開設は様々な理由から一旦白紙となり、その後しばらくPC化のプロジェクトは膠着状態となりますが、1年ほど経過したころに居抜きの候補物件が見つかります。サンシャインチェーン本部様のプロセスセンタープロジェクトが再び始動しました。

<Sフードプロセス様PC外観>

Q: そこからおよそ一年後、現在のこの場所が候補地として挙がり、プロジェクトが再始動しました。再始動したプロジェクトではどのように検討を進めて行かれたのでしょうか。

横山様: プロジェクト体制としては当社ではまず私がいて、全体的なアドバイザーとしてコンサルタントの高塚さん(平井カンパニー顧問)、生産機器と工場レイアウトプランニングは平井カンパニーさん、建築設計は食品工場専門の設計事務所という体制になりました。 最初に取り組んだのは全店舗のSKUと日々の販売数の分析からです。そこからどのアイテムを作るか、そしてそのアイテムを作るにはどういう機械が必要で、人数が何人必要で、何時間かかるのか、ということを検討していきました。それを一つ一つ計算して積み上げていき、そして全体の生産量をふまえ、必要な人員数や初期費用の減価償却などのコストを勘案し、1パックあたりの値入はこれくらいで適正か、その値入でコスト回収し黒字化できるまでどれくらいかかるのか。こういったシミュレーションを繰り返しながら工場を作るうえでの必要な生産パック数を考えていきました。

Q: 工場を作るうえでの前提条件の整理ということですね。大変な作業だったかと存じます。

横山様: 最初のうちは店舗向け機器の延長線上で計算していくと相当乖離がありましたが、平井カンパニーさんからPC向けの機器の生産性等を教えてもらいながら一つ一つ積み上げていくと、投資をまかなえる生産数や損益分岐点となる数も見えてきました。やはり工場を一つ作るとなると、それなりにまとまった生産数があり、ある程度の稼働率が見込めないと採算ベースにのらないということがわかりましたし、当社の場合は全店舗分の全量を製造するという前提で考えていかないと、投資回収もできないというのが、自分が導き出した答えでした。

Q: 全量をPCで製造する、PC供給100%化という前提ですか。

横山様: はい。事業ですから投資したら当然回収できる前提の計画を考えねばなりませんし、当然利益も追求しなければなりません。更にPC化の本来の目的であった「商品の品質の維持」を考えると、店舗での製造を残したままではその解決とはなりませんし、PCと店舗に人と設備を二重で投資することになります。すなわち当初の目的が達成できないにもかかわらずコストだけが増大してしまうと考えました。ですので、工場のキャパシティーとしてはPC100%供給ができるキャパシティーを持つという前提で考えていきました。
 前提となる生産SKUと生産パック数が決まり、必要な加工機器が決まり、あとは髙塚さんの助言も頂きながら平井カンパニーさんと工場レイアウトや生産ラインのプランニングを進めていき、工場の設計そして改装工事を進めていきました。

 こうしてサンシャインチェーン本部様のプロセスセンタープロジェクトは、横山様を中心として社内で各種データを分析し生産能力などの工場のキャパが決められ、生産ライン設計と工場のレイアウトプランニングが進められていきました。特に工場のゾーニング、レイアウトに関してはサンシャインチェーン本部様のこだわりが詰まっており、畜種ごとに保管庫や通路導線が分けられ、人もモノも極力交差しないようなゾーニングがなされ、徹底した衛生管理への配慮が各所に見られます。またレイアウトだけでなく工場内各所に注意書きが貼られ、運用面においてもその衛生管理の徹底ぶりがうかがえます。

<ところどころに貼られたゾーニングを示す注意書き>

プロセスセンターの評価

 進めてきたPCは2019年7月に稼働。稼働後まもなくインストアから加工機器を撤去し、100%PC供給体制に移行した。現時点での生産パック数は当初目標にはまだ到達してはいないが、今後新たな商品開発を行うなど様々な取り組みを通じて生産量の拡大を目指している。そのような状況のなか、横山センター長にプロセスセンターの現時点での評価を聞きました。

Q: プロセスセンターが稼働して一定期間が経過しました。今のPCに対するご評価、メリットをお聞かせいただけますか。

横山様: まず当初の目的であった「商品の品質の維持」についてですが、将来にわたっても維持できる体制ができたことは良かったと思います。プロセスセンター向けの機器であれば熟練した技術者でなくとも一定以上の品質水準の商品を大量に製造できます。派遣の方や先週入ったパートスタッフの方でも戦力になります。
 次によかったのは、これは当初は予想していなかったのですが、技術が必要な商品を製造する時間が作れた、とでも言いましょうか。派遣の方と生産性が高い機械で多くの商品をまかなえるので、高いスキルを持つ社員が手間がかかる商品の製造のために多くの時間を割けるようになりました。インストア加工では店舗毎の技術者のスキルにはどうしてもばらつきがありますので、商品の品質も店舗間でどうしてもばらつきが出てしまいます。しかしPC加工だと全量同じところから出るのでその差は出ません。機械に任せられる商品は機械で大量に製造し、難しい商品製造はスキルの高い社員に集中させるので、品質レベルも維持できます。

Q: 「手間のかかる商品に取り組む時間を作れた」ですか。

横山様: はい。PC化と生産性の高い加工機器のおかげで、手のかかった商品に取り組める余裕を作ることができました。よくPC化すると画一的で魅力的な売り場でなくなってしまうという声も聞かれます。自分たちもそう思っていたのですが、PC化により新たに作ることのできた余裕時間を有効活用すれば、PCでも魅力的な売り場づくりはやってやれないことはないと思いました。また更にお客様の要望にお応えして新たな商品をと考えたときに、どうやったらできる?どこを効率化したらその時間が作れる?といったように前向きに考えられるようになり、実際に取り組めるようになりました。これはインストア時代ではやりたくてもやれないという想いが先行しますし、現実的には難しかったと思います。

Q: もう一つの商品の品質、「鮮度」については如何でしょうか。

横山様: 鮮度についてもメリットはあります。やはりインストア加工と圧倒的に違うのは温度管理です。インストアは切りたてで鮮度が良いと考えがちですが、あの色は鮮度が良いのではなく熟成、ひいては劣化が始まっている色にすぎません。特にインストアのように通常の室温の温度帯のバックヤードで加工された商品は加工した直後は良いですが、3~4時間経過すると変色したり肉がだれたりします。精肉の鮮度を保つのはやはり温度管理で、冷蔵庫を出てから加工~包装~配送~店着まで一貫して温度管理ができるPCの方がその後の時間経過による劣化が少ない。ですからPCも充分鮮度を維持できると思います。

Q: そのほかに御社で感じたメリットはございますか。

横山様: 前もって計画を組みやすくなり、施策を実行しやすくなったと思います。例えば特売のチラシ対応の場合、インストア時代は各店舗で早朝出勤や酷い場合は前日夜も商品を加工したりしていました。しかしPC供給になってからは店舗では品出しだけで良いので、早朝出勤する必要もなくなりました。売り場を見ながら商品を補充するだけで良いので、店舗作業の軽減ができ、残業がほぼなくなりました。また最近はディスカウント系への対抗策として薄利多売の商品もそろえていますが、こういった商品への対応もPC抜きではできなかったと思います。

今回のプロセスセンターの導入はサンシャインチェーン本部様では一定の評価を得ており、横山様のお話では、当初の目的であった将来にわたって品質を維持できる体制の構築に加え、①深夜早朝の店舗作業の軽減や残業代などの削減を実現、②PC化で懸念される鮮度の低下や商品力・売り場の魅力の低下も無い、③特売や様々な施策も機動的にできるようになった、と一定の評価を得ました。 ただし②と③はPCにより実現できたというよりは、PCにより生まれた人材的・時間的余裕を無駄にすることなく、サンシャインチェーン本部様が様々な手を打ってきたことが大きいと思われます。すなわち、あえて生産性をある程度度外視しても魅了的な商品を、手間をかけて作ることや、逆に生産性の高い加工機器の特性を活かし大量生産することで薄利多売の戦略商品をつくるなどの様々な施策や取り組みによるところが大きく、単にPCを作ればよいのではなく「如何にPCを活用するか」という視点が必要だと考えられます。

<Sフードプロセス様PC内観>

PCを活用するためには全社的な視点が必要

サンシャインチェーン本部様におかれてもPC稼働から現在に至るまで様々な課題があり、試行錯誤の中一つ一つ解決してきたと伺っています。横山様にPCを活用するためにはどのようなことが必要かを伺いました。

Q: これまでプロセスセンターを運用してみて様々なご苦労や試行錯誤があったかと存じます。振り返ってみて、うまく運用するために取り組んだ良いことや決めた方が良いと感じたことはございますか。

横山様: せっかくPCを作るのならば、PCをフル活用するために店舗とPCの役割分担、ルールと制度、進捗を確認するための指標と目標値など様々な仕組みが必要だと思います。PC検討中に勉強に伺ったスーパーマーケット各社様もみな仰ってましたが、単純に作っただけではフルに機能しません。PCを作り店舗に「必要なものがあったらPCに発注して」と指示するだけでは活用されません。原料価格にPCでの加工賃がプラスされた仕入価格は店舗にとっては当然高く感じます。だったら自分たちで作った方が粗利を確保できると考えることは当然です。ですから店舗業績の評価を粗利ではなく販管費人件費込みの営業利益ベースで行っていくとか、会社側から役割分担を明確に決めPC供給の商品を決めてしまうとか、100%PC供給として店舗側の設備を無くし、人件費の低減を図ってコストメリットを享受するなど、店舗がPCを使いたい、又は使わなければダメだと思うような体制や仕組みづくりがないとうまく機能しないと思います。
 具体的なやり方としては会社によって様々で正解は無いと思いますし、PCをコストセンターとするのかプロフィットセンターにするのかによっても具体的な仕組みは異なってくると思います。
 ただ共通して言えるのは、みんなが全社的な視点を持ち、会社全体の共通利益のためにPCを以下に使っていくのか、店舗や自部門最適ではなく全社最適で考えられるような情報発信や教育や意識づけが必要だと思います。そしてその行動を促すためにその方針に従いPCを活用した方が評価されるような制度を作るなど、仕組みづくりが必要だと思います。

平井カンパニーへの評価

Q: 弊社へのご評価とご要望をお聞かせください。

横山様: このプロセスセンターの構築にあたり、PC向けの機器の提案や生産性などの情報も含め色々教えていただきました。また一つ目の候補地から含め生産ラインや工場レイアウトの設計も含め、色々とお手伝いを頂き大変助かりました。このプロセスセンターが作れたのはコンサルの方や設計会社様、施工会社様など様々な会社との出会いとご協力があってこその事でしたが、平井カンパニーさんの存在も大きかったと思います。
 今後は他社事例も含めた様々な成功事例の情報も教えていただき、当センターの生産拡大にこれからもご協力いただけたら助かります。

株式会社サンシャインチェーン本部 営業本部 生鮮商品部 精肉課 次長 兼 Sフードプロセス センター長 横山 順二 様 (写真中央)
弊社 営業部 部長 北村(写真右)、エンジニアリング担当 山下(写真左)

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