独自性のある商品作りを目指し、全体的なサプライチェーンからPCを考える
マックスバリュ西日本株式会社様
2023/10/27
マックスバリュ西日本株式会社 四国畜産プロセスセンター 概要
所在地: 香川県坂出市
稼働: 2019年11月20日
イオングループの食品スーパー事業を運営する中核会社、マックスバリュ西日本株式会社。「マックスバリュ」、「マルナカ」、「ザ・ビッグ」といった複数ブランドの店舗を中国・四国地方を中心に約400店展開しています。人口減少・人手不足といった来る将来を見据えプロセスセンター化プロジェクトを発足。2019年に稼働しました。そのプロジェクトの経緯とマックスバリュ西日本様ならではのこだわりを伺いました。
プロジェクト発足の経緯
Q: 今回のプロセスセンタープロジェクトが発足した経緯を教えていただけますでしょうか。
H様: 2014年7月に香川県並びに坂出市及びイオングループの3者間で、坂出市番の洲に常温低温の大型物流施設の立地協定が締結されました。当社としてその事業スキームの中でこの施設を最大限に生かすため、それぞれの部署で検討を重ねていました。
今は日本全国どこでもそうだと思うのですが、少子高齢化や労働人口減少、そして地方の過疎化の影響もあり、スーパーマーケットの店舗ではなかなか人材が集まらない状況にあります。そしてこの状況は将来的に悪くなることはあっても改善はされないであろうと。そういう将来を考えると、やはりプロセスセンターの必要性についての議論は避けられなかったのだと思います。
そのような中、2017年には社内でPC化プロジェクトチームが発足し、1年半かけて事業計画を作り上げていきました。
調達~加工~物流のサプライチェーン全体からPCを考える
Q: 2017年のプロジェクトチーム発足で具体的に事業化の検討が始まったとのことですが、まず最初に着手されたことは何でしょうか。
H様: プロセスセンター事業に関するコンセプトとでも言いましょうか。自社でPCを運営すれば何がどう変わるのか、何を変えてはいけないのか、というところの大方針というかPCを行う上での全体像を描くことを始めに行いました。
スーパーマーケット事業を行う会社がPCをやるとなれば、当然店舗のインストア加工の作業をPCに集約して店舗の作業を無くす、又は軽減化させることが目的になるわけですが、でもそれだけであれば失敗するだろうと考えました。
そこで当社の場合はまず「商品」というところを考えました。やはり最終的には製造する「商品」が重要で、お客さまから支持される商品を作ることのできる生産体制ということを大前提としました。
お客さまから支持される商品。これは一言では難しいですが、やはり他社と異なる強みや独自性をもった商品でなければならない、と考えています。こういった強みや独自性をもった商品を作れる生産体制という事です。そしてそれは製造拠点を集約してコストダウンを図るといった単純な問題ではありません。
商品ができ上るまでの流れを上流からのサプライチェーンで考えてみると、生産、調達があり、加工、物流という一連の流れがあります。今回加工はPCで行うという方針がありましたが、加工という工程は商品ができるまでの全体の流れの中では一工程にすぎません。ですのでPC化のプロジェクトではありますが、全体のサプライチェーンを考え、良い商品を作るための生産や調達、そして加工をするPC、その後の物流まで含めた全体像を踏まえ、その中でのPCはどうあるべきかをまず考えました。単にPCの建物や設備の初期費用を算出し、インストアの人件費減少分で回収していくといった検討を進めたわけではなく、あくまで良い商品を作るための全体像があり、その中でのPCが担う役割を考え、それを具体的に計画に落とし込んでいくという作業を行いました。
Q: まず御社の強みや差別化戦略の一つに商品の独自性があり、その商品を製造する一連のサプライチェーンについても商品に独自性を持たせることのできる体系であることが重要であり、そのためにもプロセスセンターについても独自性のある商品作りという点を重視された、ということですね。
H様: はい。店舗での加工作業の省力化という点だけを考えれば、他にも色々な選択肢があったかと思います。自社で巨額の投資をしリスクを背負って工場を建設する必要はないかもしれません。
しかし独自性のある商品、こだわりの商品を作りたいと考えたとき、銘柄や産地、加工の方法など商品を製造する一連のサプライチェーンのそれぞれにこだわりたいですし、言い換えればコントロールできる範囲を広く持っておきたい。その方が幅も広がるしこだわりも深められる、と考えました。
店舗作業の省力化を図りつつも商品作りにこだわりたい。だからこそ自社でPCをつくるという選択をしたということになります。
PCの構想から竣工、そして稼働へ
Q: 自社でPCをつくるという方針のもと、具体的なプランと投資額の試算も必要になっていくと思います。建屋の場合は広さや加工設備等の仕様が決まらないと概算も計算できないと思いますが、どのように進めていかれましたか。
H様: PCを作るのは我々にとっても初めてのことで、建物とか必要な広さであるとか生産機械についての知識はありませんでした。物事の進め方もわかりませんので、平井カンパニーさんにアドバイスをもらいながら進めていきました。
今思えば検討する順番としては逆で、生産する品目と物量があり、その生産設備が入る建物を考え、その建物が収まる土地の広さを算出するといった順番になるのでしょう。しかしそもそも決まった土地があり、その中に低温センターなど物流センターもありましたので、使える広さにはおのずと制約がありました。また生産する商品についてもざっくりとした計画数はありましたが、SKU毎の数量など詳細な値も持ち合わせていませんでした。
ですが生産品目ごとの数量や構成比については、平井カンパニーさんのこれまでの事例からおおよそ平均的な構成比を前提に考えることができましたし、提案いただいた工場レイアウト図で想定している物量の生産に必要な工場の建屋がなんとかこの場所に入るということもわかりました。おかげで予定通り計画を前に進めることができました。
Q: 御社と弊社で構想を練ったプロセスセンターの概要が固まってまいりました。ここから基本設計と実施設計へと進めていくわけですね。
H様: はい。今回のプロジェクトでは先にお話ししたグループ全体の事業スキームの枠組みの中でもありますので、建設会社は決まっていました。ただこちらの建設会社も物流センターのような倉庫は経験豊富ですが、食品工場となるとノウハウがなく難しい。ということで、建物の中身の仕様や設備も含めた詳細についてはエンジニアリング会社にお願いすることとしました。
ですので、我々が製造する畜産商品の品目と生産量という前提条件を平井カンパニーさんが加工機器と生産ライン設計、各種保管スペースやマテハン、導線やゾーニング、部屋毎の温度帯を含めた基本計画を提案いただき、エンジニアリング会社さんが生産ラインや工場が機能するための電気や空調といった設備設計を含め建物の基本設計そして実施設計へ落とし込み、実際の工事をA工事は建設会社さん、B工事をエンジニアリング会社さん、という役割分担で進めていきました。
それぞれの分野のプロフェッショナルである各社様のおかげで、建設工事から竣工~稼働まで大きなトラブルもなく順調に進めることができたと思います。
Q: いま四国畜産プロセスセンタープロジェクトを振り返り、良かった点やこうすべきだったと感じる点はございますか
H様: もっと先の将来を見据え、生産能力やスペースなどのキャパシティーに余裕を持った設計をできればと感じてはいます。これは検討段階では想定していなかったですし嬉しい悲鳴でもあるのですが、順調に生産量が増加してきておりまして、早くも当初想定のキャパに近づきつつあります。これ以上生産量を拡大したくても少し難しくなってきました。当初から将来を予測することは難しいことですが、工場は20年30年と使い続けていくので将来の生産量増加も見越して余裕を持った設計をする必要があるかもしれません。
今回は最初からスペース的にも制約がありましたのでその枠組みの中で考えざるを得ませんでしたが、理想的にはまず将来も見据えた生産量の計画や予測があり、そのうえで生産ラインや様々なスペースを将来も踏まえて考え、あえて稼働当初は空きスペースができるように設計しておくのが良いかもしれません。建物を後から広げることは難しいですが、スペースさえ作っておけば生産量の増加に合わせて加工機器も追加し生産能力を拡大することができますので。
平井カンパニーへの評価
Q: プロジェクトの初期段階から工場の稼働までご一緒させていただきました。全体を通して平井カンパニーに対する感想やご評価は如何でしょうか。
H様: 平井カンパニーさんのように工場での畜産加工に関する専門知識を持っていて建屋から加工機器からコンサルティングもしてくれる会社の存在抜きでは、我々のようなスーパーマーケット事業を行う会社がプロセスセンターを作ることは不可能でした。やはり工場をつくるうえでは、その分野の専門家が必要だと改めて感じました。食品を製造する工場ならば、その食品に関する知識、工程や加工機械に関する知識もあわせ持った専門家の存在です。
我々が求める商品の品目と物量を製造できる生産設備を平井カンパニーさんのような専門家と共に考え、生産設備が固まったらその設備が入り稼働できる工場建屋をエンジニアリング会社さんに設計していただき、施工はその専門家である建設会社にお願いをする。それぞれの分野の専門家の知見が結集してはじめてこういった工場を作ることができるのだと思いました。
Q: ありがとうございます。最後に弊社への要望をお聞かせください。
H様: 今後はますます人手不足が深刻化していくかと思います。我々のような製造工場においては今よりももっと少ない人数でも変わらず生産できる体制を模索していかねばなりません。様々なメーカーの機器を扱っている平井カンパニーさんには各メーカーの最新動向や新機種、そしてその機器の生産性をさらに高めるような生産ラインや省力化装置など、これからも色々な提案を期待しています。
取材にご協力いただいたお客様
マックスバリュ西日本株式会社
PC統括部 四国・広島PC
四国畜産プロセスセンター マネージャー H様
弊社担当
営業統括部長 榎下
営業部 猪瀬
設計エンジニアリング担当 山下
- 導入事例
- 生鮮PC
- 生鮮プロセスセンター